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TAEKO HIGASHIHARA
IN KARUIZAWA

その土地の空気や匂い、そこで暮らす人々、そして季節の移ろい。切り取られた街の物語に、それぞれの“旅するバッグ”がそっと寄り添う。世界のどこかで過ごした、旅の記憶を綴るジャーナル『SOMEWHERE』。

第5回は、ファッションエディターの東原妙子さんと涼を求めて軽井沢へ。


森に包まれ、暮らすように過ごす軽井沢

東京から新幹線で約1時間。豊かな自然に恵まれ、アートや温泉、美食までが楽しめる軽井沢は、東原さんがこれまでに何度も訪れてきたお気に入りの場所だ。
 「暑い夏は、ふらりと行きたくなりますね。今回はキッチンやデスクのあるシェア別荘を借りて、自炊や散歩、時には仕事もして。旅というより、セカンドハウスで暮らすような感覚でした」





写真)長野のご当地スーパー「TSURUYA」で食材を買い、自炊も。
 
旅先での過ごし方にも、彼女らしさが表れる。

「軽井沢に限らず、観光はあまりしません。見たいアートや行きたいサウナ、推し活など、目的を持って旅に出ることが多いです。今回は、リヒター・ラウムで開催されていたゲルハルト・リヒターの新作展と、リニューアルオープンしたセゾン現代美術館へ行くことも目的のひとつでした」


写真上)現代アートの巨匠、ゲルハルト・リヒターの作品を展示するリヒター・ラウム。
写真下)今年6月にリニューアルオープンしたセゾン現代美術館。

おいしいものを食べることも、東原さんの旅の目的のひとつ。
「軽井沢は、とにかく食のレベルが高い。東京で腕を振るっていたシェフが店を構えることも多く、その一軒を目指して訪れたくなるようなレストランがあるんです。今回の旅ではほとんど予定を立てなかったなかで、花屋さんが手掛けるレストラン『vase』だけは、料理も空間も体験したくて、旅に出る前に予約を入れました」


写真)花々に囲まれた広々とした空間で味わう、「Vase」の1日3組限定ディナー。皮をむいたキュウリを一つひとつくり抜き、花を添えたひと皿など、目にもおいしい料理が提供される。

喧騒から離れた先で出合う、ローカルな魅力


「vase」をはじめ、東原さんが好んで足を運ぶのは、軽井沢駅周辺の賑わいから少し離れたエリアだ。
「今回宿泊したのも、隣町の御代田。この辺りにはアートやライフスタイル系の複合施設が点在し、軽井沢のローカルな魅力を感じられます。御代田からさらに足を延ばして、小諸にも出かけました。一方で、軽井沢駅の南に位置するレイクニュータウンにも、個性のあるお店が増えていますね」

写真上)レマン湖畔にあるフィンランドスタイルのカフェ「一年」。
写真下)小諸駅のすぐ近くにあるモダンな中華ビストロ「Taichi」。

サウナ好きとしても知られる東原さんは、サウナや温泉も毎日のように楽しんだ。
「滞在した別荘にもプライベートサウナが付いていましたが、近くの貸切サウナや少し離れた温泉にも足を運びました。最近は各地に魅力的なサウナがあるので、それを旅の目的にするのもいいなと思っています」

写真上)日帰りで本格的なフィンランド式サウナを体験できる「KAVERI」。
機能で選んだ服と、ポイントになる小物
 アート、美食、サウナ。自分の「好き」を楽しむ今回の旅のワードローブは、意外なほどコンパクトだった。
 「ボトムスは2本、トップスは長袖、半袖、ノースリーブを1枚ずつ。あとは黄色のドレスくらい。滞在先で洗濯できたので、それほど多くは持っていきませんでした。旅では、楽に履けるパンツと、その日の気温に合わせて調節できるトップスが基本。さらに、サウナから上がったあとにさっと着られて、そのまま食事に行ける、きれい見えのワンピースやオールインワンを選びます」

写真上)ベージュのパンツは雨の日にも快適な撥水機能付き。
写真上)夜になると冷える軽井沢では、羽織りは必須。
小物選びにも東原さんならではのルールがある。
 「少ない服でも着回しやすいように、小物の色やテイストは揃えます。今回はバッグとベルトを黒ベースにして、靴は着こなしやシーンに合わせて数足用意しました。服がシンプルな分、柄のバッグや星形のパンチングが効いたベルトが、コーディネートのポイントになったと思います」
 今回の旅に選んだバッグ「TANK」は、色違いで持っているほどのお気に入りだ。
 「本当にどんな服にもなじんでくれます。大きなトートバッグは、自分の服とバランスが取りにくくて、普段はあまり選びません。でも『TANK』は、カチッとしたフォルムにトリミングが効いていて、すごくモダン。大容量という機能性だけが前に出るのではなく、これひとつで着こなしがきちんと成立するところが好きですね」

 

写真)着こなしのアクセントにしたバッグ「TANK」とベルト「Galaxy 30」。

非日常を浴びるために、旅を続ける

多忙な日々を送りながらも、国内外を問わず、出張を含めて月に一度は旅に出るという東原さん。頻繁に旅をするようになったきっかけは、何だったのだろう。
「働きすぎて、『このままではまずい』と思った時期があったんです。1、2日休もうとしても、家にいるとなんだかんだ仕事をしてしまう。それで無理にでも旅の予定を入れたら、しっかりリフレッシュできて、旅以外の時間も充実するようになって。それからは国内での1泊でも、月に一度はどこかへ行くように。私にとっては、休み=旅なのかもしれません」 
旅をより自由にしたのが、一人旅という選択肢だ。
「月に一度となると、毎回一緒に行く人を探すのは大変だし、予定が合わず、結局行かないということにもなりがち。でも、一人でも行くと決めれば、自由に動ける。友人が途中から合流することもありますが、一人旅をベースにしてから旅のハードルがぐっと下がりました」

 

写真上)空気が心地よい軽井沢ではいつもより早起きして、レマン湖周辺で散歩や朝食を。
写真下)信州味噌「山吹」を使ったラーメンで、ローカルの味も堪能。
そんな彼女にとって、旅とはどんな意味をもつのだろうか。
「私は、未知のものに触れて自分の経験値が上がることに、すごく喜びを感じるタイプ。同じ場所を何度も訪れるのもいいけれど、それは少しずつ日常になっていくと思うんです。でも、新しい旅先なら、非日常を思いきり浴びることができる。特に海外は、知らないことばかり。そうした未知に触れながら、自分が少しずつ成長していくことが楽しいです」
そして次なる旅先も、すでに決まっている。その日を楽しみに、日々の仕事に励んでいるという。
「仕事関係のイベントで京都へ行き、奈良にあるサウナにも足を延ばす予定です。多少のデスクワークなら旅先へ持っていくスタイルにしてから、気負わず楽しめるようになりました。これからも、フーテンのように旅をしながら暮らしていきたいですね」